どうやってドイツはシェアリングエコノミーを呼び込んだのか?

投稿日:2019年1月9日 更新日:

シェアリングエコノミーの考え方は、近年大きな支持を得ており、AirbnbやUberなどのイノベーターの急速な成長を導いてきた。実はこの現象の根源は、19世紀のドイツの片田舎であることいわれても信じがたいであろう。

もし彼らが十分な間スマートフォンを切ることが出来たなら、ほとんどのミレニアム世代はシェアリングエコノミーを彼ら自身のものとして主張していただろう。

コワーキング用スペースの為のオフィスの前進であろうと、新しいフィンテックのクラウドファンティングであろうと、短い休暇の為にAirbnbのレンタルの予約(もちろんUberでの旅行も)であろうと、世界の20から30の動きが協同組合という言葉に新たな意味をもたらした。

しかし彼らは協同組合という言葉を作ってはいない。称賛されるべきは19世紀のドイツの官僚であり、彼らの思想は復活したシェアリングへの関心のおかげで、脚光を浴びることとなっている。

Friedrich Wilhelm Raiffeisen―200年前に西ドイツで産まれた人物ーは、1850年に人々をオーナー、投資家、そして消費者の相互の事業活動を行うために結びつけるという考え方を、ふと思いついた地方の市長だ。

彼の「自己救済」、「自治」、そして「自己責任」の原理は、資本主義とマルクス主義の妥協点の一つであり、当時シェアリングエコノミーが牽引力を獲得していた原理より強いものであった。

そのコンセプトとは、貧乏な小作農を地主の永久債務から自由にするものであり、一方貧乏な小作農によって、地主が絶滅させられるのを防ぐものでもあった。

Raiffeisenの最初の“協同組合銀行”は、貧乏な小作人を銀行員や借り手、そして共同経営者にする資金を出し合うという、バックネットを提供した。

この仕組みは、今日ではクラウドファンティングとかシェア資本主義のような、今日で流行している名前が与えられている。

この二つの社会的な革新は、個人や公共の資産より相互利益に重点を置いたシェアリングエコノミーを予期していた点で、彼らの時代に置いて先を言っていた。

Franz Hermann Schulze-Delitzsch、ドイツの政治学及び経済学者は、このような協同組合が、公共の福祉だけに役立つのではなく、個々人を参加させることに役に立つという考えを、このコンセプトに飾った。

資本家の投資だと利益を資本家が吸い上がてしまうが、協同組合銀行なら利益を産みだした人々に利益が行くようになる。ついで、イギリスの建築組合や米国の信用金庫や相互保険会社のように、多くの国が似た機関を組織することになった。

協同組合の考え方はードイツでは協同体思想(Genossenschaft)として知られていたーRaiffeisen以降、ずっとドイツで人気である。他の国と同じように、この考え方もまた数十年に渡って、相互主義の機関が育っていくにつれて発展していったのだ。今や資本主義的機関と見分けが付かなくなってくるまでに、協同組合の機関はより大きく、そして中央集権化していった。

今日では、ドイツのスーパーマーケット界の巨人であるEdekaとReweは、もはや食料品の量り売りの為にともに連帯した小さい小売業者たちではなく、中央集達によって稼働している巨大なフランチャイズのように見える。1000以上もの協同組合Raiffeisen銀行やVolksbanks(人民銀行)の手形交換組合銀行の機能を果たしているドイツ協同組合銀行は、法人化され、国際的な銀行にまで発展した。今やそれは去年10億ユーロ以上の利益を挙げていた多数の投資家による銀行に似ている、

しかし、他の地域では協同組合のコンセプトは正しいまま生きている。住宅建築の協同組合は、ドイツの産業化の時代に起こった、重大な住宅不足の解決をもたらした。彼らは何百万もの手頃な価格の住宅を建てて、管理した。これは今日の住宅不足に対する教訓になるだろう。今やドイツには 2,000もの協同組合が存在し、200万ものアパートと300万の従業員を管理している。

ベルリンだけでも、18万ものアパートと、首都にある10%以上の住宅を管理している80の協同組合が存在している。

近年このような成功が、協同体(Genossenschaft)の概念を復活させている。 相互主義の機関の数―主に銀行、農業、エネルギー、住宅の部門―は、2004年の5500から8000へと増やしている。

Co-operative even in death. Source: dpa

このような成長は、良心的な社会主義といえる、個人的な所有権を放棄して共有を好むという特徴があるミレニアム世代にアピールしそうだ。

21世紀におけるこのアピールの理由は、19世紀の創立者によって形づくられた理由と同じであるー19世紀では、人々は相互利益を産むための方法として、限られた天然資源を用いて一緒に働くため、お互い頼りあう必要があった。

この相互主義者のコンセプトを、急を要している現代のニーズに適合させるためには、少し想像力が必要だ。ある通勤客用のカーシェアリングや、eモビリティを促進するための充電ステーション(太陽光発電や風力発電の施設)は、参加者のクリティカルマスを待っている可能性がある。いくつかのドイツの州の協同組合は、既に社会実験を行っている。

労働者協同組合は、スタートアップを始めるためのベンチャーキャピタルに替わる存在として注目を集めている。セカンドキャリアとして新しいベンチャーを始めたいが、投資者を見つけるのに苦労している早期離職者に、明るい将来を与えるものとなっている。

ただ今日、社会でよく知られた問いとして、シェア自転車やシェア住宅やクラウドファンティングなどの新しい経済を担うのが、Uberのような巨大企業なのかRaiffeisenとSchulze-Delitzschが思い描いていたような、小さくて非中央集権化された企業なのかということだ。

どちらにしても、二つの社会的イノベーターは時代に先駆けて、個人や公共の利益に基づくよりも、相互利益に基づいたシェアリングエコノミーに参画したのである。

ミレニアム世代は彼らを歓迎するべきである。

この記事は以下のニュースの転載および翻訳となっています。

Handelsblatt Global – European Business & Finance News

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