ナイキが国歌斉唱で起立拒否のNFL選手を広告に起用
オルタナ右翼が不買運動展開へ
スポーツブランド大手のナイキが、アメフ・NFLでの国歌斉唱に際して起立を拒否したコリン・キャパニックを起用した。これに対し、オルタナ右翼を中心とする層が反発し、ナイキの不買運動を展開。ドナルド・トランプ米国大統領もナイキを批判する内容のツイートを繰り返した。
かつてはリベラル陣営からの不買運動も
かつて、ナイキはリベラル陣営からの不買運動も経験している。1990年代後半のナイキ工場での労働条件に対する抗議、そして2009年から始まった宮下公園の再整備をめぐる抗議運動が主な例だ。この時、ナイキは、労働環境を監査する部門の設立、宮下公園を管理する渋谷区との協定解約という選択を取らざるを得なかった。では今回のオルタナ右翼陣営からの不買運動は、ナイキに効果的なダメージを与えているのだろうか。
尾を引く差別への抗議騒動
発端は二年前の国歌不起立
そもそも、ことの発端は2016年8月まで遡る。当時サンフランシスコ・フォーティナイナーズのコリン・キャパニック選手が、全米で相次いだ警察による黒人市民への暴力行為に対する抗議の意を込めて、試合での国歌斉唱時に膝をつくパフォーマンスを始めたのだ。結果としてキャパニックは所属先を失うことになるのだが、彼の抗議に触発された他の選手も不起立による抗議活動を開始。新たに就任したトランプ大統領は、NFLのオーナー達に対して抗議活動を行っている選手をクビにするよう求めるスピーチを行った。成立したばかりだったトランプ政権の姿勢を象徴する出来事としても、米国では大きな話題となった。
「信念を持て。全てを失ったとしても」
これに対して、NFL側は、トランプ大統領の発言が選手とオーナーの対立を煽っていると批判、その週の試合では、国歌斉唱中に各チームが選手とチームの結束を示すパフォーマンスを行うか、選手に自由な選択を行う権利を認めた。こうした一連の騒動を経て、ナイキはキャパニック選手を“JUST DO IT”30周年の広告に起用。それも選手として所属先を失ったキャパニックの顔写真に、「信念を持て。全てを失ったとしても」というキャッチコピーを重ねたデザインの広告だったものだから、トランプ支持者の方々はネット上で抗議活動を展開。今回のナイキの不買運動に繋がったのだ。

©Nike, Colin Kaepernick/Twitter
トランプ大統領「ナイキは不買運動で完全に死ぬ」
トランプ大統領は、今回ナイキが発表した広告に対しても、以下のように抗議のツイートを行った。
Just like the NFL, whose ratings have gone WAY DOWN, Nike is getting absolutely killed with anger and boycotts. I wonder if they had any idea that it would be this way? As far as the NFL is concerned, I just find it hard to watch, and always will, until they stand for the FLAG!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年9月5日
人気が落ちてるNFLと同じだ。ナイキは大衆の怒りと不買運動によって、完全に死ぬ。こうなることを予想できなかったのか?NFLは問題がある限り、私は今もこれからも観ることはできない。彼らが国旗に向かって起立するまでは!
NFLに対しても未だに憤慨している様子が伺えるが、ナイキに対しても「完全に死ぬ」と強い言葉を使っている。トランプ大統領は、「ナイキは何を考えているんだ?」ともツイートしており、抗議運動の発端となったキャパニックに対する並々ならぬ思いがあるようだ。果たして、トランプの言う通り、ナイキは不買運動によって死んでしまうのだろうか。
問われるリベラル陣営の対応
売り上げ上昇という結果に
だが、Edison Trends社によると、トランプの読みとは反対に、ナイキがこの広告を発表した後、ナイキのオンラインストアでの売り上げが31%上昇したという。昨年の同時期(9月最初の週末にあたるレイバーデイの三連休)は、売り上げの上昇率が17%であったことを考慮すれば、物議を醸したナイキのキャンペーンは成功をおさめたと言える。
「転向」を果たしたナイキ
リベラル勢力によるナイキへの不買運動は、先述の通り効果を発揮し、ナイキは企業の社会的責任、社会貢献を意味するCSRを意識した企業活動を行うようになった。その帰結として、今回のキャパニックの起用があるのだとすれば、リベラル陣営はこれを喜ぶべきだろう。そして、オルタナ右翼勢、親トランプ派による不買運動に対して、アメリカの消費者達はナイキを「買う」という選択によって、ナイキへの支持を表明した。日本では宮下公園の事件もあり、ナイキに対して良い印象を持っていない人も少なくないだろう。海を越えたここ日本では、「転向」を果たしたナイキに対して、リベラル陣営はどのような態度を示すのだろうか。

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