プラットフォーム資本主義 vs プラットフォーム協同組合主義——本当のシェアとは

投稿日:2019年1月12日 更新日:

本当の“シェア”をもたらすシステムとは

シェアリングエコノミーをどう評価するか

「本当の“シェア”は、プラットフォームを基礎にした既存の経済体制にはない—それをもたらすのは協同組合である」

こう言い切るのは、香港城市大学公共政策学部准教授のヤント・チャンドラ博士である。15日、Hong Kong Free Pressに掲載された記事で、チャンドラ博士は我々が目を背けがちなシェアリングエコノミーの真実について言及している。
チャンドラ博士は、ニューヨークのニュースクール大学教授トレバー・ショルツの研究結果を引用し、現在流行しているプラットフォーム型のシェアリングエコノミーは、既存の資本主義よりもひどく、より株主への利益が優先される仕組みになっていると主張する。現在のシェアリングエコノミーは、伝統的なサービス業(Uberに対するタクシー業界など)を脅かしている上に、シェアリングエコノミーの中の労働者たちは不当に安価な賃金で働き、雇用保険も受けられない。本誌では、ニューヨークでAirbnbがマイノリティに経済的恩恵をもたらしていることを、「ニューヨークに恩恵をもたらすシェアリングエコノミーと、そこに立ちはだかるロビイスト」でご紹介した。だが、チャンドラ博士は、労働者たちは「プラットフォーム資本主義」の道具に過ぎない、とまで言い切るのだ。

 

プラットフォーム資本主義

プラットフォーム資本主義(Platform Capitalism)とは、2016年12月に発売されたニック・スルニチェクによる同名の著書で定義された言葉である。スルニチェクはこの著書の中で、流行するプラットフォーム型のサービスを、マルクス経済学の観点を用いて批判した。かつての資本家たちは生産手段を独占していたが、今ではプラットフォームを独占している者が労働者を搾取しているというのだ。

チャンドラ博士は、続けざまにUberやAirbnbのような事業に対する抗議活動を紹介していくのだが、同時に多くの人々が恩恵を受けていると感じているシェアリングサービスに対する代替案はあるのだろうか。同博士はこう続ける。

 

プラットフォーム協同組合主義

「この問題の多いプラットフォーム型シェアリングエコノミーへの回答として台頭しているのが、「プラットフォーム協同組合主義(Platform Cooperativism)」である。協同組合のプラットフォームでは、労働者自身がオンラインプラットフォームを運営する。この数年間、プラットフォーム協同組合は、世界中で台頭してきた」

音楽とビデオ配信を行うミュージシャンによるプラットフォーム協同組合のStocksy、AmazonやEbayのオルタナティブとしてドイツで台頭しているオンライン・スーパーマーケットのFairmondo、コロラド州デンバーでシェアを広げるタクシー協同組合のGreenTaxiなど、プラットフォーム型の協同組合が影響力を高めているのだ。

 

Airbnbへのオルタナティブを実践するFairBnB

協同組合版Airbnbこと、FairBnB(フェアビーアンドビー)は、地域のコミュニティによって運営されている。FairBnBが公開している「マニフェスト」には、以下のように記されている。

フェアビーアンドビーは、まず第一に、“シェア”をシェアリングエコノミーに取り戻す、という目標に取り組む活動家、プログラマー、研究者、そしてデザイナーによるコミュニティです

FairBnBが掲げるのは、利潤よりもコミュニティに参画している人々を優先する、コミュニティ運営型の事業だ。コミュニティの負担を減らし、それいてでホストとゲストが有意義な交流を持てる、そんなプラットフォームの実現を目指している。

市民によって創られ、運営されるFairBnBは、利益をコミュニティに還元し、地元住民の搾取ではなく、利益を生む決定がなされることを保障します

—FairBnBマニフェストより

利用者自身が運営し、持てる者から必要としている者への「シェア」を行い、出た利益も「シェア」する—それこそが、本当の「シェアリング」ではないか—既存のシェアリングエコノミーのオルタナティブとして台頭してきたプラットフォーム協同組合主義は、実践を通して新たな経済の在り方を提示しているのだ。

 

技術に支えられる「未来のシェアリングエコノミー」

これまでにも、仮想通貨界隈が、既存の中央集権的なシェアリングエコノミーに対し、シェアリングエコノミーの在るべき形ではないと批判を繰り広げていることはご紹介してきた(ODYSSEYが独自トークンの配布を発表。明らかになる「未来のシェアリングエコノミー」の具体像)。

ブロックチェーン技術を利用することにより、非中央集権的なシェアリングエコノミーを作り上げることを標榜し、その経済体制を「未来のシェアリングエコノミー」と呼ぶのだ。技術的なアップデートを加えることにより、中央集権のシステムを脱してしまおうということだ。そして、ブロックチェーンには、そうした非中央集権型のプラットフォームを作動させるだけの技術的裏付けがある。
こう考えると、中の人間が「頑張る」ことによって本当の「シェア」を実現しようとする協同組合型のシェアサービスと、ブロックチェーンという新たな「技術」によって「シェア」を実現しようとする「未来のシェアリングエコノミー」は、表裏の存在だと言える。
アップデートしなければならないのは、技術か人間か——おそらくはその両方だろう。

-コラム
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