【自動運転×経済学】松尾匡×VTuberリコピンめぐみ対談 Vol.2

投稿日:2019年1月8日 更新日:

 経済学者×VTuberによる対談企画、未公開トーク第二弾

経済学者・松尾匡とVTuber・リコピンめぐみによる異例の対談企画が実施された。10月30日に社会評論社から刊行された『変革のアソシエ』38号に掲載された特別対談だ。「自動運転と経済学」をテーマに、松尾匡が聞き手となり、リコピンめぐみが自動運転の現状と未来を語っている。前回の未公開トークVol.1では、自動運転について考える時には避けて通れない“トロッコ問題”をテーマにした議論が繰り広げられた。第二回目となる今回は、未公開トークの中から、自動運転と密接に関係していくことになる「シェアリングエコノミー」「電気自動車(EV)」に関する議論をピックアップした。

この二つのトピックについては、本編でもたっぷりと語られているが、先日リコピンめぐみが公開した動画「自動運転・EV化以降の未来で生き残る、たったひとつの冴えたやり方」に詳しい。本編記事、未公開トークと合わせてご覧いただきたい。

シェアリングエコノミーの利点

リコピンめぐみ(以下、リ) 自動運転とシェアリングエコノミーは、両輪で動くことになっていきそうですね。

松尾匡(以下、松) シェアリングについてよく分かっていないので、説明して頂きたいです。Uberなんかがそうですが、最近、労働問題に関しては印象が悪いですよね。とてもネガティブなイメージになってきている。元々はポジティブな話だったじゃないですか。所謂レフト2.0の人達が好きな話でしたが、実際には労働条件が厳しいという話になっていると思います。現状はどういうことになっているんですか?

 そうですね。私の実体験から話させていただくと、以前インドネシアに住んでいたことがありまして、そこでは「Gojek」というシェアリングサービスが普及しています。インドネシアには以前から「Ojek」(Gojekではなく!)というサービスがあったんです。どういうサービスかというと、村の真ん中にチェックポイントがあって、バイクを持ったお兄さん達がたむろっているんですね。30分程度で行ける距離だと、日本円でいうと500円ほどで連れて行ってくれるというシステムが昔からありました。要するにタクシーの溜まり場と一緒ですね。
そこで、シェアリングサービスとの違いですが、シェアリングではドライバーが集まっているポイントへユーザーが行くのではなく、「今ここにいるので、迎えにきてくれ」と、アプリで呼べるようになる点が大きな違いです。呼ぶ側は、「ここからここまで行きたい」というのをアプリで指定できるので、インドネシア語が不慣れでも大丈夫だし、500円だったものが150円くらいになるのでOjekよりも安価なんですよね。一方で、Gojekのドライバーたちは、以前よりも儲かっている。なぜなら、みんながGojekを使うようになって、使われる回数が増えた。そして待機時間が減った。全体として見ると儲かるようになったということです。
ただ、そこに労働問題が絡んできます。そもそもシェアリングエコノミーというのは、UberやGojekもそうなのですが、車やバイクの整備は車の持ち主、つまりドライバー側がやらないといけないからそれだけ手間がかかる。自分の働きたい時間に働けるという利点もありながら、利用回数分だけ給与が支払われるため、たくさん利用して欲しいという誘因は働く。そうすると値段が抑制されて、ドライバーは過剰労働になりがちという問題はあります。どうしたらいいんでしょうね。インドネシアでは時々、「Gojekの運賃を上げろ」とストライキが起きるんですよ。Gojekを呼んでも来ない日があって、どうしたのだろう?と思ってニュースサイトを見ると「Gojekがストライキ」みたいな。ここのドライバーが連帯してちゃんとストライキをできるのは偉いと思いますが。

 面白い。偉いですよね。タクシーとはどこが違うんですか?

 従来のタクシーだとお客さんを捕まえるのが難しいですよね。アプリだとすぐに呼んでもらえる点は違います。また参入障壁の高さの違いもあって、Uberのシステムを全国タクシーも取り入れていますが、Uberは車などの資産を持っていなかったわけですよね。ソフトウェアを作ってアプリを配布すれば、あとは自分たちのプラットフォーム上でお金を稼げる。ITのベンチャーはとても参入しやすいんですよ。

 莫大な設備投資は不要で、ソフトウェアだけで参入できるということですから、個人タクシーが自分たちでソフトウェアを作って同じことをすることもできるんですかね。

 そうですね。技術力は問題ですが、参入障壁は低まっているので可能性はあると思います。

 

EV(電気自動車)を町工場で生産!?

 日本のメーカーがこんな風で…というお話がありましたが、消費者からの立場とすれば、どこの国の車であろうが、安くて良いものであれば構わないという心情もあります。なので、日本のメーカーが振るわなくて、外国のメーカーが躍進して、日本の雇用を生んで、消費者も安いものが手に入る、という方向に行く可能性もありますよね(笑)
お話を聞いていると、そんなに巨大なメーカーでなくても生産できるということでしたね。そうすると、注文生産という形も考えられますよね。町工場のような場所に町の人達が行って、コンピュータを見ながらどういうデザインにするということを選んだり、組み合わせて作ったりですね、町工場レベルで自動車ができるという可能性はありますか。車体の部品は外部に発注して、組み立ては町工場レベルでやるという。

 それはできると思いますね。EV車の生産過程は「水平分業」なんですよね。モーターもバッテリーも、他社から調達してくればいいんです。一方でガソリン車の生産過程は「垂直統合」なのでこういうことができません。

 そうすると、協同組合のような組織でも車を作ることができるようになりますね

 確かにがんばればできるかもしれませんね。でも、協同組合が車を作る利点はあるんですか?

 まぁ、資本に支配にされない、ということですが(笑)

 なるほど(笑)自分たちで出資したEVを持つということですね。そうなると面白いかもしれないですね。

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対談本編では、自動運転とシェアリングエコノミー、EVの関連についてより深い議論が繰り広げられている。この対談の本編は、『変革のアソシエ』38号(税込1,080円)に掲載されている。
お求めの方は、お近くの大型書店または socialsolidarityeconomy@gmail.com まで。

 

松尾匡、ブレイディみかこ、北田暁大 著

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学』(Amazon.co.jp)

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