アメリカ合衆国農務省は、なぜプラットフォーム協同組合を支持するのか

投稿日:2019年1月13日 更新日:

議題は「シェアリングエコノミーの在り方」へ

増殖する「シェア」

UberやAirbnbの登場によって、目覚ましい発展を遂げているシェアリングエコノミー。本誌では、シェアリングエコノミーが社会に与えてきたポジティブな影響をご紹介すると共に、そのシェアリングエコノミーを批判し、別の在り方を主張する「未来のシェアリングエコノミー」を掲げる声もご紹介してきた。「Platform資本主義 vs Platform協同組合主義—本当のシェア」では、プラットフォームを所有する企業を中心に据える既存のシェアリングエコノミーを「プラットフォーム資本主義」と批判する声を紹介した。この記事中に、新たなオルタナティブ運動として紹介したのが、プラットフォーム協同組合主義だ。既存のシェアリングエコノミーと同様のオンラインプラットフォームを利用しながらも、利用者自身が運営を担うという協同組合型の運営方針によって、より公平な利益の再配分と健全な労働環境の実現を目指している。
このように、一言で「シェアリングエコノミー」と言っても、その取り組みは多岐に渡る。経済社会にとって、もはや「シェア」は当然の前提となり、問われるのはその「在り方」となった。
そんな中で、今回取り上げるのは、アメリカ合衆国農務省のプラットフォーム協同組合への態度だ。世界の最先端を行く資本主義大国のアメリカで、プラットフォーム協同組合はどのように扱われているのだろうか。

 

プラットフォーム協同組合を支持する米農務省

アメリカ合衆国農務省は、2016年に発刊された機関誌「Rural Cooperatives」9/10月号の中で、プラットフォーム協同組合をいち早く特集している。「勢いを増すプラットフォーム協同組合」と銘打ったこの特集では、UberやLyftといったシェアリングエコノミーが人々にもたらした利益を紹介した上で、このように記している。

一方で、プラットフォームを基軸にしたサービスには批判もある。プラットフォームの所有者と投資家に経済的権力が集中し、プラットフォームの利用者に対して優位な立場にあるという点だ

至極冷静な分析である。同誌は続いて、「プラットフォーム資本主義 vs プラットフォーム協同組合主義」にも登場したニュースクール大学教授のトレバー・ショルツの言葉を引用する。

UberやAirbnbのような会社は、物質的にはなんのインフラも用いることなく現在の成功を謳歌しています

更に、こう続ける。

車も、アパートも、労働力も、そして重要なことにあなたの時間も、彼らが作り上げたものではないのです

同誌は、そもそもアメリカの農業協同組合は、その利用者が民間企業にアドバンテージを取られないように成立してきたものだと説明する。シェアリングエコノミーにおいても、同様の展開を見せているとし、米国内のプラットフォーム共同体の現状を紹介していくのだ。詳細については別の機会に譲ることにするが、米国農務省としても、既存のシェアリグエコノミーに対するオルタナティブが勃興することを望んでいるようにも見える。

 

規制に乗り出すニューヨーク

思い出されるのは、「ニューヨークに恩恵をもたらすシェアリングエコノミーVSロビイスト」で紹介したニューヨークの状況だ。ニューヨークでは、Airbnbをはじめとするシェアサービスがマイノリティにも恩恵をもたらしている一方で、既存の業界団体から猛反発を受けている。タクシー業界にとっては、顧客のみならずドライバーまでもがUberとの争奪戦に。しかし、そこは長年ロビー活動を続けてきたタクシー業界。業界団体が支援する民主党の大ベテラン議員、ルーベン・ディーアス・シニア市議会議員を中心に、シェアライドサービスに有料の登録を義務付ける制度の制定に向けて取り組んでいる。ホテル業界にとって脅威となっているのはAirbnbだ。宿泊料が割高なことで知られていたニューヨークの街に、安価な民泊という選択肢が現れただけでなく、ニューヨークの市民にとっても新たな収入源が生まれることになった。この状況に動き出したのは、新人議員のカリーナ・リベラ市議会議員。ニューヨークホテル業評議会の支援を受けて初当選を果たした彼女は、Airbnbのような民泊業者が部屋の提供者の情報を市に提出することを義務付ける法案の作成を進めている。

 

二つの事実が示すもの

このように、同じシェアリングエコノミーの中でも、農務省は「プラットフォーム協同組合」を支持し、ニューヨーク市議会では「プラットフォーム資本主義」に対して規制を推し進める動きがある。2016年はまだ民主党オバマ政権であったこと、名前を挙げたニューヨーク市議会議員が民主党議員であることを考えると、「プラットフォーム資本主義」の無尽蔵な拡大に対する一貫した動きを見せていると考えることもできるだろう。一方で、農務省が「プラットフォーム」というシステムや「シェア」というコンセプト自体を否定せず、次の次元に臨もうとしている点は特筆に値する。過去に帰ろう、このままでいよう、ではなく、新たな代替案を、という姿勢だ。左派にあっても新しいシステムを取り入れていこうとするこの柔軟性が、アメリカの強さの秘密なのかもしれない。

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