豪映画配給会社が仮想通貨導入へ——映画界と仮想通貨

投稿日:2019年1月16日 更新日:

 仮想通貨と接近する映画界

映画市場のシステムを大きく変えうるシステム

オーストラリアの映画配給会社デマンド・フィルム社が、ドイツで仮想通貨の導入を開始する。The Hollywood Reporterが報じた。2016年に設立されたデマンド・フィルムは、英語圏でドキュメンタリーや注目作品の上映企画などを実施している。今回のドイツへの進出は、同社にとって初めての非英語圏への進出となる。大胆な戦略に打って出たデマンド・フィルムだが、その裏には、既存の映画市場のシステムを大きく変える構想が存在している。

トレイラーを観るだけで仮想通貨を受給

デマンド・フィルムのCEOデビッド・ドッペルによると、ユーザーは、映画のトレイラーを観たりシェアすることで、同社が発行するスクリーンクレッズ(Screencreds)と呼ばれる仮想通貨(暗号トークン)を受け取ることができる。シェアサイクル業界においては、仮想通貨を導入する企業は、ユーザーが自社の自転車を利用した分だけトークンを受け取ることができるシステムを導入している。映画界においても新たなスタンダードが生まれることになるのだろうか。

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スクリーンクレッズの二つの使い道

「口コミ」という名のプロモーション活動に対する対価

デマンド・フィルムが発行するスクリーンレッズは、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨同様、ブロックチェーン技術を利用したものとなる。非中央集権的なプログラムになるということである。ドッペルCEOは、以下のように続ける。

ユーザーたちは、現在既にやっていることに対して、報酬を得ることになります。映画のトレイラーを観て、(SNS等で)シェアして、彼らの友人へプロモーションを行うのです。そして、影響力に応じて報酬を受け取ることになります。シェアされたトレイラーを多くの人が見て、多くの人が映画のチケットを買うことになれば、ユーザーはより多くのスクリーンクレッズを受け取ることになります。

つまり、今まで「口コミ」という形で映画のプロモーションを担ってきた消費者達が、それに対して正当な報酬を得られるようになるといういうのだ。そして、得たスクリーンクレッズは、デマンド・フィルムが主催する上映会や舞台挨拶といったイベントのチケットと交換することができる。スクリーンクレッズは、数ヶ月の内にオーストラリアの仮想通貨取引所であるNCXに上場される予定だ。

 

製作陣にも利益配分を

また、デマンド・フィルムは、スクリーンクレッズを映画製作陣への著作権料/印税の支払いにも利用する計画を進めている。既にオーストラリアの映画監督らと話し合いを進めており、上映後のセールスを即時に反映する利益分配を行うシステムを構想しているという。前述の通り、ブロックチェーン技術を利用するスクリーンレッズは、決済に際して、中央の存在を必要としない。映画のセールスが上がるたびに、その収入が自動的に製作者に送金される仕組みを作り出すことができる。消費者のみならず、生産者にとっても意義のある取り組みとなる可能性があるだろう。

 

交わる映画界と仮想通貨

映画館チェーンも仮想通貨決済を採用へ

今月始めには、映画界と仮想通貨にまつわるニュースがもう一つ届いている。タイ最大の映画館チェーンを運営するメジャー・シネプレックスが、劇場での仮想通貨決済の導入を検討するという。こちらは独自のトークンを発行するわけではなく、既に流通している仮装通貨を利用するという。国内だけで2,200億円ともされる映画興行市場の仮想通貨導入は、仮想通貨の利用と経済界の脱中央集権化を促進する原動力となるだろうか。

 

映画製作に訴訟問題も

映画界においては、仮想通貨を扱った映画の『Crypto』の撮影が進んでいる。ドラマ『ウエストワールド』にも出演しているルーク・ヘムズワースが主演を務め、ハリウッドスターのカート・ラッセルも出演する予定だ。仮想通貨を利用した詐欺を題材にしているということだが、どのようなメッセージが描かれるのか、今から楽しみである。
他方、ディズニー傘下でコミック大手のマーベルは、同社の作品であり、映画が空前の大ヒットを記録した「ブラックパンサー」に登場する国名「ワカンダ(Wakanda)」をもじった「ワコインダ(Wacoinda)」という新しい仮想通貨の商標登録に対し、法的措置を取ることを検討している。

仮想通貨が普及し、影響力を増すにつれて、エンターテイメント業界も、その対応を迫られることになる。人々の身近にありながら、日常のレベルで影響力を持つ映画界が、どのように舵を切るのか、見守っていくことにしよう。

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