「ofo」が日本上陸。 -シェアサイクルの現在と未来-

投稿日:2019年1月7日 更新日:

 

シェアサイクル大手のofoが日本上陸

世界一のシェアサイクル襲来

中国大手シェアサイクルのofo (オフォ)は、2018年3月28日より、和歌山県和歌山市でサービスの提供を開始すると発表した。ofoは中国最強企業のアリババから出資を受けており、現在中国国内では半数以上のシェアを確保している。2018年3月現在、世界21カ国で利用できるofo。世界一のシェアサイクルブランドであるofoの日本への進出、それも和歌山市からのサービス開始に注目が集まっている。

自治体との連携

ofoは、サービス開始までに和歌山市との協定を締結し、連携する予定としている。つまり、提携締結前に事業開始を発表したということだ。同社が既に提携関係にあり、東京と大阪でのサービス開始を目指すとしていたソフトバンクC&Sとの事業よりも早い展開を見せている。未だシェア争いに発展していないブルーオーシャンへの進出を目指すofoと、観光客誘致を目指す和歌山市の思惑が一致した結果と見られる。

シェアリングエコノミーを追いかける中で、前回前々回も触れたシェアサイクル。中国では、PM2.5を中心とした環境問題対策に取り組みたい中国政府からの支援を受け、爆発的な広がりを見せた。日本では規制や文化の違いもあり、まだまだ浸透していないが、ここにきてofoという真打の登場となった。

日本のシェアリングエコノミーを背負うメルチャリ

2月からサービス開始

ofoよりも一ヶ月早い2月末からメルカリが展開する「メルチャリ」はどうだろうか。ofoは和歌山市からのスタートだが、メルチャリは福岡市をサービス開始のエリアに選んだ。運営陣は中国での視察も行い、日本の交通事情や規制に適応できるモデルづくりを目指している。

 

シェアリングエコノミーが性善説を立証するか

昨年9月、DMM.comがシェアサイクルへの参入を表明するも、放置自転車による公害問題の懸念を払拭しきれず、11月には参入を断念(この後、DMMが仮想通貨の取引所運営およびマイニング事業に参入したことは周知の通り)。この課題を克服するため、メルチャリでは、駐輪ポートの提供や放置自転車の移動をユーザーが行うとポイントが付与される仕組みを導入した。メルチャリの運営陣によると、この利用者が運営に参加する共同運営型サービスの背景には、メルカリにも見られる「性善説」に立ったカルチャーがあるとされている。共同運営型のビジネスモデルが、日本でどこまで機能するのかが試されることになりそうだ。

さらに、中国国内でofoとシェアを争うmobike(モバイク)は昨年末、LINEとの提携を発表し、日本進出の準備を進めている。日本にとっては、まさにシェアサイクル元年。日中の企業と自治体の思惑が交錯する中、シェアサイクル事業はどのような展開を見せるのだろうか。

ブロックチェーンを導入するoBikeが目指すもの

シンガポールから現れた新星

一方で、こうしてアジアで広がりを見せるシェアリングエコノミーに牙を剥いたのが、シンガポールに本社を置くoBikeだ。oBikeは2017年1月にサービスを開始したばかりの新興企業。中国で繰り広げられるofoとmobikeによる激烈な覇権争いを避けるようにして、シンガポールやマレーシア、台湾などのアジア諸国、オーストラリアとヨーロッパでも事業を展開し、2017年3月現在、16の国と地域で利用できる。

 

シェアリングエコノミーにブロックチェーンを

そんなoBikeが目をつけたのが、ブロックチェーン技術を基盤とする仮想通貨だ。ブロックチェーン技術は分散型台帳技術とも呼ばれており、理論上、記録されたデータは改ざんできない。特定の管理人や組織を置かず、オープンソースで取引を確認できるため、決済に際してのコストを非常に安価に抑えられる他、銀行や国家といった中央の存在を介さずに個人間の取引を記録することができる。

oBikeは2017年12月末に、一部投資家からカルト的な人気を誇る仮想通貨・TRONとの提携を発表。2018年1月には、oBikeの創設者であるYi Shiが率いるODYSSEYなる組織から、将来的にoBikeで利用できると謳われたOcoin (通貨単位:OCN)を発行。ICO (Initial Coin Offering)による資金調達を行なった。そして、この通貨発行が意味するものの答えは、ODYSSEYが発行したホワイトペーパーの中にある。

「ODYSSEYのミッション 帰還 −過剰供給の時代の中で」と題された第2章では、7ページに渡って、現在のシェアリングエコノミーが抱える問題について熱弁が振るわれている。詳細は当該ホワイトペーパーを参照して頂きたいが、第2章の冒頭で語られるのが、以下のコンセプトである。

 

“ODYSSEYの革命的使命(revolutionary mission)は、既存の中央集権型シェアリングエコノミーに対して、非中央集権型のシェアリングエコノミーとピアツーピアによるエコシステムを構築することです”

真のシェアリングエコノミーを

シェアリングエコノミーの勃興は結果的に、ウーバーやAirbnbといった「巨人」を生み出し、新たな中央集権を生み出した。ユーザーのプライバシーは侵害され、企業による取引は以前不透明なままだと、ODYSSEYは主張する。この既存のシェアリングエコノミーに対抗すべく、ブロックチェーンやスマートコントラクト、AIを利用することで、「未来のシェアリングエコノミー」を作り出すのだという。いずれもインダストリー4.0=第四次産業革命の中心技術となるキーワードが並んでいるが、これらの技術を用いることで、中央集権的な管理システムは過去の遺物となる。そして、それがシェアリングエコノミーの本来あるべき姿だというのだ。

前述のTRONは、ホワイトペーパーの中で、文化的で創造的な産業は資本家ではなくクリエイター自身の手で運営されなければならない、という前衛的なコンセプトを打ち出していた。お気づきだろうか。もはやシェアリングエコノミーが良いものかどうか等という議論はとっくに過ぎ去っており、彼らはブロックチェーンという武器を手に、シェアリングエコノミーの中の「支配」に対して牙を剥いていることがわかる。

中国企業に後押しされる形で、ようやくシェアサイクル事業、延いてはシェアリングエコノミーが動き出した日本。国内で更に進んだ議論を打ち出すのは、官か民か、それとも第三の勢力か−

 

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