シェアリングエコノミー市場規模は5,250億円
内閣府が初の試算を発表
内閣府は2018年7月25日、シェアリングエコノミーの市場規模の試算結果を初めて公開した。試算は2016年を対象として行われた。シェアリングエコノミーに分類される民泊、クラウドファンディング等の合計で5,250億円に上る。国内総生産(GDP)で換算すれば、シェリングエコノミーがGDPを950億〜1,350億円押し上げることになる。日本ではまだまだシェアサービスに対する規制が強いが、シェアリングエコノミーが国内の経済に与える影響について、今後の指標となりそうだ。
フリマアプリが全体の数字を牽引
シェアリングエコノミーの分野ごとでは、メルカリなどのフリマアプリをはじめとする「モノ」の分野が最大で、3,000億円の市場規模と試算された。民泊などを対象とする「スペース(空間)」がこれに次ぐ1,400億〜1,800億円、クラウドワーク等による代行業務を指す「スキル・時間」が150億〜250億円、クラウドファンディングを含む「カネ」の分野が150億〜200億円と続いた。海外で主流となっているシェアライドやシェアサイクルといった「移動」の分野が含まれていないため、まだまだ拡大していく余地があるだろう。特に、シェアサイクルの分野では、今年に入ってからシンガポールのofoの日本進出、メルカリによる「メルチャリ」の展開など、拡大が目覚ましい。地方自治体による独自の取り組みも進んでおり、来年以降の数字に影響を与えることは確実だ。
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シェアリングエコノミーと国内経済
市場規模5,250億円はどれ程の規模なのか
しかし、「市場規模5,250億円」とは、一体どれほどの規模なのだろうか。他の業界と照らし合わせて見てみよう。経済産業省の「特定産業動向調査」によると、遊園地・テーマパーク市場は2015年で約6,500億円。2013年には約5,700億円と、現在のシェアリングエコノミーと同規模だったが、インスタなどの「シェア文化」の拡大も手伝い、二年で一気に数字を押し上げている。株式会社矢野経済研究所の試算によると2015年の時点で、レンタカー業界の経済規模は約6,500億円。全国ハイヤー・タクシー連合会によると、タクシー・ハイヤー業界はその3倍ほどの経済規模だ。両業界のライバルにもなるであろうシェアライドが日本でも解禁されれば、シェアリングエコノミーの経済規模は更に拡大していくだろう。
GDPへの貢献はわずか
一方で、GDPに与える影響は大きくない。日本のGDPは500兆円規模であり、シェアリングエコノミーが押し上げるのは小数点二以下の数字にすぎない。経済規模に対して、なぜGDPに与える影響がここまで小さいのだろうか。その原因は、シェアリングエコノミーの特殊性にある。例えば、メルカリなどでの取引は、「中古品売買」に当たり、「生産」という概念に含まれない。「モノ」の分野に限らず、シェアリングエコノミーでは使っていない遊休資産を活用しようという活動が中心になる。よって「国内総生産」を押し上げる要素にはならないのだ。
シェアリングエコノミーの真の意義
だが、新しく何かを作るのではなく、既に持っているもの、存在しているものをシェアするというのが、シェアリングエコノミーの最大のテーマであるとすれば、GDPという指標は、シェアリングエコノミーの理念を理解している人々にとっては、それほど気にかけるべき数字ではないのかもしれない。旧来の経済システムの常識を疑い、塗り替えていくこと、それを実現できるという期待こそが、シェアリングエコノミーが人を惹きつける魅力なのではないだろうか。シェアリングエコノミーが、ただの「業界」ではなく、「エコノミー」と呼ばれる所以である。
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市場整備後に問われる真価
もちろん、先に触れたように、日本の強い規制の中でシェアリングエコノミーは健闘していると見てよい。シェアライドは「白タク行為」として認められておらず、天下のUberも日本での展開は、飲食宅配サービスの「UberEats」が中心になっている。その分野における規制が強いということは、業界団体の力が強いということでもあり、それだけ大きな市場規模があるということでもある。インバウンド需要の増加や働き方の多様化に合わせてシェアリングエコノミーが拡大し、各分野の規制が整備されていけば、シェアリングエコノミーは、より大きな市場を作り出すことになるだろう。
経済にも強い影響を与え、人々の生活をも変えるようになった時、経済界も一介の市民も、シェアリングエコノミーの真の姿を見ることになる。
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