クラウドからエッジヘビーコンピューティングへ
AIとIoTがプロダクトの中心的な役割を果たす時代に必須のシステムとなる「エッジヘビーコンピューティング」。リソースを中央に集中させてデータの処理や管理を行う、現在主流のクラウドコンピューティングに代わるシステムとして、近年注目を集めている。
注目されるエッジコンピューティング
エッジヘビーコンピューティングは、そもそも「エッジコンピューティング」から派生した新たなシステムのことだ。エッジ(Edge=先端)とは、スマホや車など、ユーザー側に位置する最終端のデバイスを意味する。AIやIoTを活用する分野であれば、エッジは車や重機でもあり得るし、工場のロボットでもあり得る。
これまで、エッジはクラウドと接続され、クラウド上でデータを処理することでデータを保存・共有してきた。今やクラウド上のAIがビッグデータを分析し、マーケティングや農業の計画に活かすという話は珍しいものではなくなった。
だが、AIとIoT技術の発達により、サービスやプロダクトを通して得られる情報量が増えていく時代において、得たデータを毎回クラウドに送り処理していたのでは、成果を最大化できない分野も登場するようになった。例えば、コマツは2017年12月に工事現場でエッジコンピューティングを利用した支援を開始すると発表した。エッジコンピューティングを利用すれば、ドローンが撮影した工事現場の測量写真をその場で処理し、工事に必要なデータを生成、現場で利用することができる。これまで測量後にデータを一度クラウドに送り、必要なデータの生成までに数時間を要していたことを考えれば、大幅な効率化が実現する。
つまり、「データを一度中央のクラウドに投げ、現場に戻す」という作業を、身近なデバイスを連携させることで、すべて現場で完結してしまうということだ。「中央集権から分散へ」という発想は、リアルタイムで高速の大容量通信を実現する5Gや、分散型のデータ保存技術であるブロックチェーンとともに今後も推進されていくコンセプトの一つである。それをシステムとして機能させるのが、エッジコンピューティングなのだ。
エッジヘビーコンピューティングとは
一つのクラウドに対して無数のデバイスという形ではなく、デバイス同士を連携させ、より高速で精度の高い処理を実現するエッジコンピューティング。そのエッジコンピューティングを更に深化させるシステムが、日本のユニコーン企業であるプリファード・ネットワークスが開発を進める「エッジヘビーコンピューティング」だ。エッジコンピューティングに「ヘビー」という単語が加わったこのシステムには、上記のようなエッジデバイス間の情報処理に、ディープラーニング(データ処理の経験を積むことによって、一定の法則を見つけ出すなど、賢くなるAIのアルゴリズム)を含む機械学習の要素が加わる。
エッジコンピューティングでは、エッジデバイスで処理できる情報量が多くなったとしても、情報の質までもが担保されているわけではなかった。エッジヘビーコンピューティングでは、ディープラーニング機能を持たせたエッジデバイス同士の協働を可能にする。深層学習機能を持ったデバイス同士がディープラーニングを活用してデータの処理を行い、データを共有するのだ。
例えば、学習機能を持つ工場のロボットが自分たちで考え、学び、作業の効率化を図る。先ほど例にあがった工場現場でも、各重機が機械学習を備えた自動運転重機に置き換わった時、刻一刻と変化する工事現場の状況で次に起こること、次に必要な作業、あるいは事故の危険性を察知して重機同士で情報を共有し、作業を行うことができる。
私たち生身の人間は、目や耳で受け取った情報の内、不要な箇所を削り、足りない部分を補った上で完成させた情報を他者と共有している。エッジヘビーコンピューティングではその感覚に近い、あるいはそれを超える情報処理を実現する。AIが自分で考え、必要な情報を取り出すという人間同様の動きが可能になる。AIがリアルタイムで分散学習し、IoTでつながる真の分散協調型のシステムを作り出すことができるのだ。
GAFAのクラウドから分散へ
GAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon) は、人々の生活をクラウドに縛り付け、そこでビッグデータを作り出すことで2010年代の世界の覇者となった。しかし、クラウドからの個人情報流出が大きな問題になり、中央集権型システムの脆弱性は既に露呈している。今の世界は、クラウドが止まれば全てが止まってしまう社会に変貌しつつある。
そうした危機感から、人々は分散型の社会のあり方を模索し始めている。そして、ブロックチェーンにAI、IoT、そしてエッジヘビーコンピューティングといったテクノロジーが、2020年代の社会のあり方を変えていく。

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