Airbnbがニューヨーク市を提訴 民泊潰しに「行き過ぎた強権」

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ニューヨーク州の新法に「行き過ぎ」Airbnbが提訴

情報開示を義務付ける新法案が可決

米時間の8月24日、民泊を展開するAirbnbが、ニューヨーク市を提訴した。提訴の理由は、「市政による異常なまでの強権」とされている。先日、ニューヨーク市では、Airbnbなど民泊運営企業に、民泊に登録されているサービス提供者(部屋を貸し出すホスト)の情報開示を義務付ける法案が可決されたばかり。同法は2019年2月2日から施行されることになっており、この法律が実際に施行された場合、個人情報が政府に渡ることに懸念を持つ利用者が民泊から手を引くことが予想される。ニューヨーク市で好調な業績を維持しているAirbnbにとっては、大きな痛手となる。

 

「数百万ドルに及ぶロビー活動の成果」と主張

今回、Airbnbがニューヨーク市に訴えているのは、この新法が「ホテル業界による数百万ドルに及ぶロビー活動の結果」だという点である。本誌が以前お伝えした通り、この法案の可決を主導したのはニューヨーク市議員のカリーナ・リベラ議員。リベラ議員は新人議員だが、昨年の選挙でニューヨークホテル業評議会(The New York Hotel Trades Council)の支援を受けて当選を果たしている。当然、恩のあるホテル業界の要求を通すことは、彼女が果たすべき最初の仕事なのだ。

関連記事:ニューヨークに恩恵をもたらすシェアリングエコノミーVSロビイスト

 

 分断されるニューヨークの街

マイノリティの生活を支えるシェアリングエコノミー

だが、個人情報が政府に渡ることを良く思わない人は当然いるだろう。トランプ政権の成立以後、南米にルーツを持つ在米人への風当たりが強くなる中で、Airbnbは、公式ウェブサイトでもラテン系コミュニティのホストが増えていることを特集している。Airbnbによると、2016年にはこのマイノリティのコミュニティに、約5,800万ドル(約62億円)の売り上げをもたらしたことを特集している。ラテンコミュニティに限ったことではないが、移民のコミュニティの中には、移民としてのステータスが合法ではない人々も存在する。そうした人々にとっては、シェアリングエコノミーに参加すること=自分のステータスが政府に知られることは、自分たちの生活を失うことに直結するのだ。

左派による反シェアリングエコノミー活動

ニューヨークといえば、6月に実施された民主党下院議員の中間予備選挙において、「民主社会主義者」を名乗る28歳のオカシオ・コルテズが民主党重鎮のジョセフ・クローリーを打ち破ったことが話題になった。ニューヨーク市は、51議席中48議席を民主党の議員が占める民主党の牙城。元々リベラル色が強い地域だが、民主党の中でも更に左派に位置する候補が勝利したのだ。右派メディアは若干28歳のコルテズの勝利を、「民主党は落ち着くべき」と執拗に書き立てるほどであった。
そんなリベラルな風土がありながら、ニューヨーク州はなぜシェアリングエコノミーへの規制を進めるのだろうか。現在、Uberを始めとするシェアライドの規制を進めるニューヨーク市のルーベン・ディーアス・シニア市議会議員も、民主党のベテラン議員だ。ニューヨーク州議会で14年間もの間、州議会議員を務めた重鎮。ルーベン・ディーアス・シニア市議会議員は、タクシー業界から支援を受けており、前述のリベラ議員同様、業界団体からの要請に従ってシェアライド業界の規制を進めているのだ。

 

ジレンマを乗り越えられるか

資本主義のオルタナティブに立ちはだかる障壁

ニューヨークにおけるシェアリングエコノミー規制を巡る問題を複雑にしているのは、一見既存の資本主義に対するオルタナティブを提供しているようにも見えるシェアリングエコノミーへの、左派側からの「保守的」な規制政策だ。既存の経済システムに属する労働者の生活を守るということは、必ずしもシェアリングエコノミーを通して利益を得る市井の人々の生活を守ることには繋がらない。政治家として生き残る為には政治団体の支援を必要とする以上、左派系の政治家にとっても、取ることができる行動は限られているのだ。

 

左派のジレンマ

そして、民主社会主義者を標榜するオカシオ・コルテズも、民主党議員の例に漏れず、「反Uber」の姿勢を打ち出している。5月のツイートでは、ニューヨークでUberの拡大を起因としてイエローキャブのドライバーが自殺したという記事をシェアしている。一方で、保守的な姿勢で知られるFOXニュースは25日、オカシオ・コルテズが選挙キャンペーン中の4月から6月の間に、4,000ドル=160回分をUberに使用し、2,500ドル=90回分をJunoというシェアライドに使用していることを報道した。選挙の二年前まではウェイトレスとして働いていたという彼女のの庶民的な印象と違わない行動ではあるが、タクシー業界を支援するというキャンペーンの理念には反しており、保守派メディアから揚げ足を取られる結果となった。

既存の経済システムに挑み、左派からもキャンペーンを張られた結果、八方塞がりとなったAirbnbは司法に訴える手段に出た。Airbnbが「行き過ぎた強権」と批判するニューヨーク市の決定を、司法はどう判断するのだろうか。

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