ニューヨークの未来の姿-パリ市で続くAirbnbへの厳しい規制

投稿日:2019年1月16日 更新日:

Airbnb最大の市場にして、最も厳しい取り締まりを行うパリ市

パリ市が民泊ホストへの罰金を引き上げ

「Airbnbは、最も厳しい取り締まりを実施したパリを始め、規制を好む大都市のお陰でUberと同じ道を歩む」——この見出しで民泊を巡る厳しい規制の現状を報道したのは、POLITICO誌のザカリー・ヤング記者だ。フランスの首都であるパリでは先日、Airbnbなどの民泊業者を通して部屋を提供している家主への罰金を、大幅に引き上げたことを発表した。フランスは世界一の観光大国であると共に、Airbnbはパリだけで65,000件ものホストを抱えている。これは全世界で見ても、一つの街としては最大の数字である。パリ市は、年始から8月15日までに、138万ユーロ(約1億7,700万円)もの罰金を徴収したと発表しており、パリ市が「違法民泊」とする事業が、貴重な財源になっているとも言える。

大都市で強くなる民泊規制の流れ

一方で、パリ市当局の住宅部門の担当者は、Airbnbのような事業は街の住宅供給に影響を与え、家賃を高騰させるばかりでなく、コミュニティを観光の呼び物に変えてしまうと指摘している。そして、シェアリングエコノミーの中枢に位置する民泊に対する取り締まりを強化しているのは、パリ市だけではない。スペインのバレンシアは、未登録のAirbnbホストを追跡する100人態勢のチームを結成し、昨年は60万ユーロ(約7,800万円)もの罰金を徴収している。ドイツのベルリンでは、2016年に民泊を禁止している。理由はパリ市と同じく、住宅の供給不足と家賃の高騰を挙げていた。

アメリカではAirbnbがニューヨーク市を提訴

ホストの個人情報提出を義務付け

当サイトでもお伝えしてきた通り、アメリカのニューヨーク市では、Airbnbをはじめとする民泊業者に、登録されているホストの個人情報を市に提出するよう義務付ける法案が可決されている。サンフランシスコ市では今年からホストの個人情報提出が義務付けられており、Airbnbの登録ホスト数は、なんと半分近くにまで減少している。Airbnbは、マイノリティのコミュニティにも貴重な収入源となっており、自身のステータスが政府の手に渡るということになれば、利用ホストの減少は免れない。Airbnbとホスト達にとっては、まさしく死活問題なのだ。

関連記事:ニューヨークに恩恵をもたらすシェアリングエコノミーVSロビイスト

個人情報の収集は違憲」Airbnbが市を提訴

Airbnbは、ニューヨーク市のこの決定に対して、「ホテル業界が大金を投じたロビー運動に屈した結果」と断罪し、政府による個人情報の収集は違憲であるとしてニューヨーク市を提訴している。同法は2019年2月2日から施行されることになっており、司法の判断に注目が集まっている。

関連記事:Airbnbがニューヨーク市を提訴 民泊潰しに「行き過ぎた強権」

 

パリはニューヨークの未来の姿か

Airbnbは「とても残念」

このようなパリ市の対応について、Airbnbはどのように受け止めているのだろうか。同社の広報担当者は、Global News誌に以下のように話している。

 

私たちは、ヨーロッパの他の先進都市であるベルリンやバルセロナ、ロンドンの行政とは、効果的に協力し合うことができています。パリ市とは、そうした関係とは程遠い状況にあり、とても残念です。

 

ことの発端はやはり個人情報の登録義務化

そもそも、パリはなぜこのような状況に陥ったのか。ことの発端は2017年の末、パリ市はAirbnbをはじめとする民泊事業のホストに、事前の登録を義務付けた。ところが、約80%のホストが期限までに登録を行わず、現在もAirbnbのリストに掲載されているホストの内、84%が未登録なのだという。パリ市のイアン・ブロッサ市議員は、こう説明する。

 

市として、プラットフォーム事業には責任を果たさせる必要があります。現在、Airbnbは法律に従わなくてもやっていける状態なのです。

 

とはいえ、前述の通り、そもそも個人情報を行政に提出することに抵抗がある市民が多いことも事実だ。市民間で遊休財産をシェアするアイデアであったはずのシェアリングエコノミーが、政府によって介入を受けるということは、シェアリングエコノミーの根幹にあるポリシーに反する。ニューヨーク市での提訴騒動は、「パリの二の舞」を避けたいAirbnbによる必死の抵抗なのだろう。

 

左派からのシェアリングエコノミー規制

実は、イアン・ブロッサ市議員はフランス共産党に所属している。ニューヨーク市では民主党所属議員がシェアリングエコノミーへの規制強化を進めており、左派の側からシェアリングエコノミーに対する規制が仕掛けられていることが分かるだろう。同時に、ブロッサ市議員は「現在の規制ではホストから罰金を徴収している。利潤を得ているAirbnbを罰するべきだ」とも主張しており、規制強化の中で揺れ動く心情も垣間見られる。
破竹の勢いで世界へと広がったAirbnbは、行政の力によって衰退していくのだろうか。そして、シェアリングエコノミーは、本気になった政府に打ち勝つだけの力を蓄えてきただろうか。Airbnbと行政の戦いが、今後の命運を握っている。

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